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自分では受けたくない治療を、あえて患者に施す医師が多いのはなぜだろう? 医師は、何を考え、悩みながら、患者に向かっているのだろう? 患者や家族は、医師に何を期待しているのだろう? そんな素朴な疑問から「ドクターズ・ヴォイス」を立ち上げた。今回は、緩和ケア診療所「いっぽ」の萬田緑平医師のストレートなヴォイスを届けよう。 自分や家族には、奨めたくない治療があるが...... 「治癒が困難なために、絶対に避けたい、つらい治療がある。だが、医師は患者にとってつらい治療と知りながらも、患者に施術することがある。多くの医師は、自分が病気になった時は受けたくない、つらい治療が何かは分かっている」――。萬田医師は単刀直入に切り出した。 例えば、治癒の見込みがきわめて困難ながん治療の場合、抗がん剤治療を行わない医師は多い。医師仲間でも「抗がん剤はカンベンしてほしい」「この手術だけは絶対にしたくない」などと話すこともよくあるという。闘病のつらさや苦痛、日々疲弊していく患者の表情や身体状況を日常的に見聞きしているので、抗がん剤の有用性の是非は、ある程度の確証をもてるからだ。 ...